バイデン米大統領初外遊 対中国で戦略的構図の確立図る
バイデン米大統領(AP=共同)
【ワシントン=黒瀬悦成】バイデン米大統領による9日からの就任後初の外国歴訪では、バイデン氏が唱える「同盟・パートナー諸国を結集して中国やロシアなどの権威主義勢力に対抗する」という外交・安全保障分野での一大方針が実際の外交舞台で本格的に試されることになる。中でも最大の焦点は、バイデン政権にとって地政学上の最大の懸案である中国をめぐり、ロシアも絡めた適切な戦略的構図を確立できるかどうかだ。
バイデン氏は、11~13日に英南西部コーンウォールで開かれる先進7カ国首脳会議(G7サミット)と、14日のブリュッセルでの北大西洋条約機構(NATO)首脳会議で、民主主義や人権などの普遍的価値観を共有する勢力が連携して中露の覇権的行動を阻止していくことを確認する。
バイデン氏はその上で16日、ジュネーブでプーチン露大統領と初の直接会談に臨む。米政権関係者によると、プーチン氏との会談をこのタイミングで設定したのは、世界の主要国と西欧諸国と中露への共同対処姿勢を確認し、米国が国際社会を代表してプーチン氏と「初対決」する構図をつくるためだった。
バイデン氏は既に、インド太平洋地域で日米とオーストラリア、インドの4カ国(通称クアッド)首脳による初のテレビ会議を開き、中国を含む地域の懸案で協力を進めていくことを確認した。東アジアの主要同盟国である日韓とも、それぞれワシントンで会談し、同盟強化を打ち出した。
続くG7サミットとNATO首脳会議はバイデン氏にとって、民主主義諸国による世界的な対中連携態勢を構築する「総仕上げ」に位置付けられる。
その上でバイデン氏がプーチン氏との会談で目指すのは、米国が中国との競争に戦略資源を集中投入できるよう、ロシアとの「関係安定化」を曲がりなりにも実現させることだ。
米情報機関は3月、ロシアが昨年の米大統領選で干渉工作を展開し、バイデン氏の追い落としを図ったと結論付けた。
バイデン政権は4月、選挙干渉に加え、ロシアによる昨年12月の米政府機関などに対する大規模なサイバー攻撃や、反体制派指導者、ナワリヌイ氏の収監などへの対抗措置として、ロシアに対し大規模な制裁措置を発動し、米露関係はソ連崩壊以降で最低の水準にまで冷却化している。
バイデン氏としては、世界各地の民主体制や経済システムへの信認の低下を狙った選挙干渉やサイバー攻撃は断じて容認できない。一方で、会談では中露との「二正面作戦」を避けたいとの思惑をプーチン氏に逆手に取られることなく、対露関係のこれ以上の悪化を食い止めるという、難しい対応を迫られそうだ。