専門家が読み解くポスト安倍時代の日米軍事協力の変化

安倍晋三首相の辞意表明から一夜明けた8月29日、河野太郎防衛相はエスパー米国防長官との会談のためハワイへ赴いた。「ポスト安倍時代」の日米軍事協力がどのように推し進められるのかが、人々の関心の焦点となっている。(文:廉徳瑰・上海外国語大学日本文化経済学院教授、日本研究センター長。環球時報掲載)

日米間の軍事関係には最近可変的要素が生じた。双方が協力深化を強調する一方で、日本が米国からの武器購入計画を立て続けに撤回したことを、外の世界はいぶかしんでいる。これについて、中谷元元防衛相は「日本は防衛予算を浪費して、すでに時代後れの効果をなくした防衛システムを購入したくはない。これは日本自身の軍事産業の発展にも影響する」と表明した。

しかし、米国が日本に武器購入を要求するのは、貿易赤字の削減が目的だ。イージス・アショアはトランプ大統領が2017年の訪日時に安倍首相に購入を求めたものだ。トランプ大統領は日本に在日米軍の費用80億ドルの負担も要求した。日本の防衛予算は約500億ドルで、多くが米国製の軍用品や武器の購入に充てられる。これには在日米軍に毎年払っている「思いやり予算」は含まれない。今年再選を目指すトランプ大統領は以前、最初の任期中に大量の武器を輸出したことを自慢した。選挙を前に日本が米国製武器の購入を中止した場合、トランプ大統領の業績に影響が及ぶだろう。米国は日米関係、特に軍事協力と在日米軍の利益に影響が生じない限り、誰が首相になるかに関心があるわけではない。

しかし、「敵対国の脅威」を口実とすることなしに大量の軍事貿易の実現は困難だ。先般外国メディアの騒ぎ立てた中国によるミサイル2発の発射も当然、日米が「中国の脅威」を誇大宣伝するための絶好の材料となった。ミサイル防衛に関して日本は朝鮮の脅威だけでなく、中国の脅威も誇張している。現在の問題はすでにイージス・アショアの配備ではなく、敵基地をいかに攻撃するかになっている。こうした先制攻撃が「平和憲法」違反の問題に及ぶのは明らかであり、「専守防衛」原則の突破を意味する。日本国内には、日本は戦争を発動せぬことを堅持してよいが、自国の安全のため、攻撃を受けないために、攻撃される可能性のある状況を防ぐべきであり、「自衛」の正当性を維持すると同時に、先制攻撃を行い敵基地を破壊する必要もあるとの主張がある。つまり攻撃はしたいが、侵略の責任は負いたくないということだ。

米国は「中距離核戦力(INF)全廃条約」の破棄後、中距離ミサイルの配備再開を表明している。日本は当然候補地だが、今なお立場を明確にしていない。米国は「衛星コンステレーション」計画も画策しており、当然日本も引き込まれる。この計画は小型衛星群を配置して、中国、ロシア、朝鮮の開発する新型ミサイルを監視・撃墜するというものだ。その有効性はまだ知る由もないが、一つ明確なのは、中国と朝鮮の脅威を極力利用し、誇張して、日本を始めとする同盟国を強く引き込んで、米国の指導力を維持するということだ。要するに米国にとっては、ポスト安倍時代に誰が政権につくかは問題の鍵ではなく、誰が米国の有償軍事援助に貢献できるかこそが問題の鍵なのだ。(編集NA)

「人民網日本語版」2020年9月2日

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