宇宙の軌道資源は「早い者勝ち」?中国の専門家「宇宙ガバナンスの強化が必要」
米スペースX社が通信衛星網「スターリンク」を構築する衛星を数万基打ち上げることを計画していることについて、全国政治協商会議常務委員で中国月探査チーフデザイナーである呉偉仁氏は取材に、「軌道及び周波数資源は今やレアな資源であり、各国が競争している。国際機関による調整がぜひとも必要だ。自分は宇宙ガバナンスの問題について、宇宙ガバナンス近代化の提案を提出した」と述べた。中国新聞社が伝えた。
呉氏によると、宇宙の軌道資源は限られている。特に地上から約3万6000キロメートル離れた対地同期軌道について、国際的にはかつて2度の間隔をあけて1基の衛星を置くと規定されたが、今や1度の間隔に1基で、計360基置けるようになった。技術の発展に伴いこの距離はさらに短縮される。打ち上げられる衛星が増えるほど、軌道資源もより重要になる。また無線周波数資源も国際的には、「早い者勝ち」という原則が採用されている。
呉氏は、軌道資源と周波数資源は今やレアな資源で、各国が競争しており、国際機関による調整がぜひとも必要と強調した。今や1万基近くの衛星が地球軌道上を飛行している。国際機関はこの問題をすでに意識しており、関連活動の計画見直しを提案したが、完全には実施されていない。
呉氏は、「軌道及び周波数資源の利用について、現在一部の国も関連ルールと法律の制定を急ぐよう呼びかけているが、一つのプロセスが必要だ。これは宇宙ガバナンスの問題にも関わる。自分はまた宇宙ガバナンス近代化の提案を提出した。これは一国で解決できるものではなく、全世界、特に主要国が協力して解決しなければならない」と述べた。
打ち上げられる衛星の増加に伴い、スペースデブリ問題も注目されている。呉氏によると、中国は90年代よりスペースデブリ研究を開始した。「この問題を解決するためには、まずスペースデブリを発見できなければならない。中国はすでにその位置を比較的正確に判断し、カタログを作成できるが、微小デブリの観測能力をさらに高める必要がある」と呉氏。
呉氏はスペースデブリへの対応について、「打ち上げにおいて、ある打ち上げ時間帯のある高度やある時点によってスペースデブリと衝突するか否かを観察することを通して、打ち上げ時間を調整し回避する。これは受動的な手段だ」と例を挙げて話した。
さらに、「世界でも現在、スペースデブリ除去技術の試験も展開されている。これは非常に大変ハードな任務だ。なぜなら、デブリの数が増えており、すでにカタログに挙げられている10センチメートル超のものがおよそ数万個あるからだ。今後の打ち上げ回数の増加、宇宙船の増加により、スペースデブリの総数も増え、除去の難易度も上がるだろう」と述べた。
呉氏は最後に、「しかし人類にはスペースデブリ問題を解決する方法があるはずだ。現在複数の国、特に宇宙大国がこれに労力と経費を投入している」と述べた。(編集YF)
「人民網日本語版」2022年3月10日