トヨタの工場が市民開発 業務“カイゼン”で月間475時間削減を見込む

市民開発に取り組むトヨタは、生産現場をどのように“カイゼン”しているのか。現場を熟知する従業員による市民開発は、従来型の社内の情報システム部門による開発とどこが違い、DXにどのような影響をもたらしているのか。

[田中広美,ITmedia]

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 トヨタ自動車(以下、トヨタ)の田原工場(愛知県田原市)は、BI(ビジネスインテリジェンス)やアプリ開発のためのプラットフォーム「Microsoft Power Platform」(以下、Power Platform)を利用して市民開発に取り組んでいる。日本マイクロソフトが2023年2月14日に同社Webサイトで明らかにした。

「業務(効率)が確実に変わっていることを実感できる」

 田原工場はトヨタの国内最大規模の工場で、「ランドクルーザー プラド」やLEXUSブランドの自動車などの生産を手掛けている。

 トヨタは2021年3月に豊田章男社長が「デジタルについて、この3年間で世界のトップ企業と肩を並べるレベルまで一気にもっていきたい」というメッセージを発信したことをきっかけに全社でデジタル化を推進しており、田原工場もこの波に乗って市民開発を開始した。

 田原工場は以前からデジタルツールを取り入れてきた。Power Platformを中心としたローコード/ノーコードによる市民開発に取り組むことでDX(デジタルトランスフォーメーション)がより迅速に進んでいるという。

 市民開発に取り組むまでは、システムを導入する場合に本社の情報システム部門に依頼していた。実務を知らない情報システム部門に対する説明や要件定義の手間がかかり、システムが出来上がるまでに長い時間がかかっていた。改善に結び付くまでに数年かかることもあったという。

 それが、実務を熟知している従業員が自身の課題を解決するためにアプリ開発することになったことで「業務(効率)が確実に変わっていることを実感できる」という手応えを感じていると、アプリ開発に携わる田原工場エンジン製造部 第2鋳造課 小金澤 孝之課長は述べる。

作業1件当たり9分短縮 市民開発の効果

 市民開発の効果は数字でも明らかだ。保全担当者の作業場所と作業内容を記録する保全作業管理アプリの導入後は、作業1件につき9分短縮したと試算されている。アプリを活用している第2鋳造課では、毎月平均635件の保全作業が発生していることから1カ月当たり約95時間削減される。エンジン製造部内の5課で同アプリを展開することで、月間削減時間は合計約475時間に達すると同社は試算する。

 生産現場の安全性や危険性に関する気付きを事前に察知して改善する「ヒヤリハット」提案の管理も紙からアプリへ移行した。蓄積されたデータはBIツール「Microsoft Power BI」によって集計を自動化して分析することで、ヒヤリハット事案が起きやすい状況やそれに対するケアが十分にできているかどうかを把握しやすくなったという。

 田原工場は今後、「生産設備IoT(モノのインターネット)を市民開発感覚で進めてPower Platformとつなげたい」と生産現場のシステムの市民開発を検討している。

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