AIで企業や商品に対する“顧客の声”を約1300種類に分類する「感性分析サービス」 日立から
日立は、SNSや口コミサイトなどのWeb上の情報、テレビや新聞などのマスメディアの情報、コールセンターの会話記録などから、“顧客の声”を高精度に可視化する「感性分析サービス」を開始。業務情報と連携し、売上予測やリスク対策などに活用できる。
[金澤雅子,ITmedia]
日立製作所(日立)は2018年10月1日、SNSやブログ、口コミサイトなどの情報、テレビや新聞などのメディア情報、コールセンターの会話記録などから、企業や商品に対する“顧客の声”を約1300種類の「話題」「感情」「意図」に分類、可視化する「感性分析サービス」の提供を開始した。
「感性分析サービス」の概要図
感性分析サービスは、徳島大学発のベンチャー企業である言語理解研究所(ILU)の感性分析AI「ABスクエア」を活用し、日立と本田技研工業(以下、Honda)と共同開発した。自然言語を高精度に理解するAIエンジンにより、メディアなどから収集したテキストデータを、約1300種類の話題・感情・意図に分類し、「好意的」「中立」「悪意的」の3大分類と、さらに細分化した全81種類の中から感情を特定できるなど、文意を考慮した高精度な感性分析ができる。
この解析に用いる辞書データベースは、ILUが約30年にわたって蓄積した7万6000種類の単語知識と400億パターン以上の意味共起(自然言語処理分野で、関連する複数の文字列が生起すること)知識の組み合わせから構成されており、文章に込められた感情や意図など、文字では読み取れない間接的な意味も高い精度で理解できるという。
さらに、分析に必要なデータを高精度に絞り込むため、日立が機械学習技術を活用したフィルタリング技術を開発。ILUのAIエンジンとともにサービスの中核技術として適用した。
このフィルタリング技術は、収集したい単語に関連性の高い単語を機械学習し、絞り込み条件を自動更新する。流行語や造語、専門用語など、絞り込み条件として登録されていない語でも、出現頻度や単語間の係り受けの関係から分析対象になるか否かを判断する。データの絞り込み精度を継続的に向上でき、辞書メンテナンスに要する作業負荷を抑えられる。
また、分析結果を表示するビュワーには、ユーザーが“気づき”を得やすい検索機能を実装。分析データに、単語間の関係性を示す情報をタグ付けし、単語一致でなく、話題一致で検索できるようにした。例えば、「ホームラン」と記載がある文章は、「野球」のカテゴリーに分類し、「野球」で絞り込んだ場合に、原文に「野球」の記載がなくても、「野球」に分類された一連の情報とともに検索結果に表示する。
業務システムとの連携も可能で、顧客の声を拡販計画や売上予測などにつなげられる他、ネガティブな感情の拡大を自動検知、報告する機能により、リスク対策ツールとしても利用できるなど、企業の多岐にわたる業務への活用が期待できるとしている。
感性分析サービスの提供価格は、個別見積もり。活用コンサルティングサービス、構築サービス、維持運用サービスをトータルで提供する。
サービスの提供開始に先行して、2018年4月からHondaの広報・マーケティング活動に適用。新車発表やイベント出展の反響分析として、顧客のイメージや感情を車種別やトピック別などに精緻に可視化し、分析やレポート作成に要する業務負荷を軽減できるなど、一定の効果を得ているという。
今後、日立は、Hondaとの取り組みを日立のデジタルソリューション「Lumada」のユースケースとし、コンシューマー向け事業を展開する企業を中心に同サービスを幅広く展開していく。
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