相場操縦などの不公正取引をAIが調査――カブドットコム証券、売買審査業務にAI「Hitachi AI Technology/H」を導入
カブドットコム証券は「見せ玉」などの相場操縦取引を見つける売買審査管理業務に「Hitachi AI Technology/H」を導入し、売買審査の高度化と審査効率の向上に取り組む。
[金澤雅子,ITmedia]
カブドットコム証券は、相場操縦行為などの不公正取引の調査を行う売買審査業務に、日立製作所(以下、日立)のAI「Hitachi AI Technology/H」を導入する。2018年8月から本格利用を開始する。
証券会社は、金融市場におけるゲートキーパーとして、不公正取引の疑いのある取引を的確に見つけ、必要な注意喚起や規制などを迅速に実施することが求められる。これを受け、カブドットコム証券では、売買審査の高度化と審査効率の向上を図る試みとして、AIを導入する。
実装イメージ
従来の審査とAI適用後の審査の比較イメージ
今回、AIの本格導入に先立ち、カブドットコム証券は日立とともに、Hitachi AI Technology/Hを活用した実証実験を進めてきた。過去に不正取引と見なされた事例をAIに学習させ、株価の動きなども含めた売買データを基に不審な取引を抽出し、不公正取引の可能性を高精度に検知できることを実証。
実証実験を通じて、人手による要審査件数の大幅削減が可能になるなど、AI活用の効果が確認できたことから、「売買審査管理システム(TIMS)」にAIが算出する「スコアリング(不正の可能性の点数)」への実装を決めた。
導入当初は、大量の虚偽注文で第三者の注文を誘引する相場操縦「見せ玉」の審査に適用し、売買審査システムによる一次抽出データのうち、人手による審査が必要ないデータの見極めに利用する。売買審査担当者の知見をAIが学習し、スコアリングモデルの精度を高め、算出するスコアの閾値を徐々に引き上げることで、業務の効率化が推進され、審査の実効性が高まると見込んでいる。
さらに、見せ玉以外の相場操縦審査にも適用していくとともに、「内部者取引審査」や「なりすまし審査」の調査にも活用し、AI活用による売買審査業務全般への効率化、精緻化に取り組んでいく。
なお、Hitachi AI Technology/Hは、ビジネスに関連するデータを網羅的に分析し、売り上げやコストなど、組織のKPI(重要業績評価指標)との相関性が強い要素と、KPIを改善する施策の仮説を効率的に導き出すことができるAI。2018年3月には、東京証券取引所の売買審査業務に採用されている。
日立では、今回の取り組みをIoTプラットフォーム「Lumada(ルマーダ)」のユースケースとして広げ、サービスの開発、提供を推進していく方針だ。
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