1+1が2にならなかったサプライヤーの企業統合の行方は:自動車業界の1週間を振り返る(1/2 ページ) – MONOist

1+1が2にならなかったサプライヤーの企業統合の行方は:自動車業界の1週間を振り返る(1/2 ページ)

さて、今週は心配なニュースも流れてきました。サプライヤーのマレリホールディングス(マレリ)が、経営再建に向けて私的整理である事業再生ADRを申請する、とメディア各社が報じました。

[齊藤由希MONOist]

 土曜日ですね。1週間お疲れさまでした。花粉症シーズンが始まりましたね。目がしょぼしょぼ、鼻がつまってグズグズ、憂鬱な季節です。頑張って乗り切りましょう。

 さて、今週は心配なニュースも流れてきました。サプライヤーのマレリホールディングス(マレリ)が、経営再建に向けて私的整理である事業再生ADRを申請する、とメディア各社が報じました。

 マレリは、旧カルソニックカンセイと旧マニエッティマレリが統合されて2019年5月に発足したサプライヤーです。統合前(2017年)の売上高はカルソニックカンセイが9986億円、マニエッティマレリが82億ユーロ(約1兆716億円)だったので、単純に足し算すれば売上高2兆円のサプライヤーとなったはずでした。

上場廃止前の旧カルソニックカンセイの業績(金額の単位は億円)

2013年度 2014年度 2015年度
売上高 9,187 9,656 10,533
営業損益 288 316 382
経常損益 295 283 344
当期純損益 250 201 225
日産の販売台数 518万台 531万台 542万台

FCAがマニエティマレリを売却、カルソニックカンセイと統合し売上高2兆円規模に

日産がカルソニックの全株式を5000億円で売却、ヴァレオは市光を完全子会社化

 ただ、2020年の売上高は1兆2660億円(104億ユーロ)で、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響を踏まえても厳しい業績でした。また、2016年から「マレリ株式会社」として発表している決算公告を見ても、経営は芳しくなかった様子がうかがえます。

マレリ株式会社の決算公告(金額の単位は億円)

2016年度 2017年度 2018年度 2019年4月1日~12月31日 2020年暦年
売上高 3,506 3,524 3,200 2,172 2,148
営業損益 70 59 2.2 △65 △160
経常損益 397 102 △68 △40 △277
当期純損益 383 103 △150 △84 △282
日産の販売台数 562万台 577万台 551万台 493万台(年度) 405万台(年度)

 帝国データバンクの調査によれば、マレリホールディングスの日本での取引先は3万7965社あります。成形用の金型、金属プレス部品、プラスチック部品、原材料などのモノづくり関連の取引先が多いですが(1万3581社)、ソフトウェアの受託開発や、電気機械器具の卸売業、貨物運送など幅広い業種がマレリホールディングスにかかわっています。取引先は首都圏や北関東が多数を占めていますが、2020年に愛知県岡崎市で工場を新設したこともあり中部地区にも取引先が多くあります。

 「事業や雇用、商取引は原則として継続されるため、サプライヤーや工場などがある地域に関してひとまず悪影響はない」(帝国データバンク)としていますが、経営改善を進めていく中でどのような影響が出てくるのか、3万8000社が注目しているといえます。


マレリホールディングスの取引先[クリックで拡大] 出所:帝国データバンク

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1+1が2にならなかったサプライヤーの企業統合の行方は:自動車業界の1週間を振り返る(2/2 ページ)

[齊藤由希MONOist]

2017年に車載セキュリティで新会社、ITとクルマの連携を模索

 旧カルソニックカンセイ時代の取材で記憶に残っているのは、2017年に立ち上げた車載セキュリティの会社「ホワイトモーション」のことです。航空機メーカー出身の社長が立ち上げたフランスのセキュリティ企業Quarkslabと、旧カルソニックカンセイの合弁会社です。

カルソニックカンセイが車載セキュリティで新会社、「ITをクルマに合わせていく」

 コックピットを手掛けるサプライヤーとしてセキュリティへの対応が重要になる中で、設立時の社長をIT業界から招いたことも特に印象的でした。制約が多い自動車の中でIT業界の知見をどうやって生かしていくか、異業種同士で融合の道を探る姿勢がすてきだなあ、と思っていました。

 経営再建というだけでも平時は大変なことですが、今はコロナ禍でさまざまな制約やサプライチェーンの問題もあり、カーボンニュートラルに向けて自動車メーカーも変化を迫られています。その中で経営再建に取り組むのは平時以上に困難な道のりになるかもしれませんが、乗り越えていってほしいですね。

今週はこんな記事を公開しました

→過去の「自動車業界の1週間を振り返る」はこちら

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