生成AIはノーコード開発ツールを代替するか――NTTデータの取り組みから探る:Weekly Memo(1/2 ページ) – ITmedia エンタープライズ
生成AIはノーコード開発ツールを代替するか――NTTデータの取り組みから探る:Weekly Memo(1/2 ページ)
プログラミングもできる生成AIは、従来のノーコード開発ツールを代替するのか。NTTデータの生成AIに関する取り組みから探る。
[松岡功,ITmedia]
この記事は会員限定です。会員登録すると全てご覧いただけます。
今、話題沸騰の生成AIはプログラミングも行えることから、従来のノーコード開発ツールを代替するのではないか――。NTTデータが2023年6月29日に開催した、生成AIに関する取り組みを説明した記者会見で、ソフトウェア開発に生成AIを適用することについて取り上げていたので、この疑問を解き明かしていく。
生成AIをソフトウェア開発分野へ適用
NTTデータは「生成AIの活用をグローバルで推進する体制を整備」(注1)「多様なデータを連携させて根拠ある回答文を作成する生成AIサービスを提供開始」(注2)の2点をこの会見で発表した。生成AIをソフトウェア開発にどのように適用するのか、以下にそのエッセンスを紹介しよう。
NTTデータの古川 洋氏(技術革新統括本部 技術開発本部 イノベーションセンタ センタ長)は、NTTグループが生成AIに関して「自然言語処理技術の研究を40年以上続けてきており、世界でも最高水準の技術を保有している」と述べた後、NTTデータとしても次の3点に取り組んできたと説明した(表1)。
- NTTによる日本語BERTモデルの開発
- NTTデータによる金融版BERTの開発
- 自然言語処理によるソリューション提供
表1 NTTグループとしての生成AIに関するこれまでの取り組み(出典:NTTデータの会見資料)
今回発表したように、生成AIの活用をグローバルで推進する体制を整備したことから、「生成AIのソフトウェア開発分野への適用」「各拠点が持つソリューションの展開」「ラボ活動を通した顧客との協創を推進」「生成AI活用のためのガイドラインの策定とグローバルガバナンス体制の整備」といった4つの取り組みを進める構えだ。筆者はその1つ目に注目した。
4つの取り組みを説明した古川氏が「生成AIは、特にわれわれのメイン業務であるソフトウェア開発において確実に活用しなければならない技術だ」と強調したのが印象的だった。
同氏はさらに「生成AIをソフトウェア開発分野へ適用することによって、この分野の課題を解決していきたい」として、次の3点の課題を挙げた。それぞれの解決策としては表2に示す内容で進めるとした。
- 開発者が不足している領域への適用
- ソフトウェア開発領域全般への拡大
- 著作権・知的所有権への対応
表2 ソフトウェア開発分野の課題(出典:NTTデータの会見資料)
印象的だったのは、最初に挙げた開発者が不足している領域への適用について「モダンな言語を扱う技術者よりもレガシーな言語を扱う技術者の方が不足している。レガシーな言語によるプログラミングを生成AIで補えるようにLLM(大規模言語モデル)の増強を図りたい」(古川氏)と語ったことだ。数多くの基幹システムを手掛ける同社ならではの悩みともいえそうだ。
生成AIはノーコード開発ツールを代替するか――NTTデータの取り組みから探る:Weekly Memo(2/2 ページ) – ITmedia エンタープライズ
生成AIはノーコード開発ツールを代替するか――NTTデータの取り組みから探る:Weekly Memo(2/2 ページ)
[松岡功,ITmedia]
生成AIがノーコード開発に与える影響は?
また、生成AIの活用をソフトウェア開発領域全般へ拡大させるという課題については、これに取り組むNTTデータの村上功修氏(技術革新統括本部 システム技術本部 ADM技術部 部長)が「生成AIは、ソフトウェア開発領域の主に『製造工程』で活用されつつある。われわれとしては上流の『要件定義工程』から下流の『テスト工程』まで全ての工程において活用し、全体として生産性の向上を図りたい」と述べた(表3)。
表3 生成AIの活用をソフトウェア開発領域全般へ拡大(出典:NTTデータの会見資料)
さらに、生成AIを活用したソフトウェア開発プロセスの整備について、村上氏は「われわれはこれまで、メインフレーム全盛の時代はもちろん、オープンシステム、アジャイルな開発においてもソフトウェア開発プロセスを整備してきた。そしてこれからは生成AIを活用した次世代のソフトウェア開発プロセスを整備し、海外を含む当社の全従業員19万5千人が標準利用できるようにすることを目指す」と説明した(表4)。
表4 生成AIを活用したソフトウェア開発プロセスの整備(出典:NTTデータの会見資料)
表4は、ソフトウェア開発プロセスにおける歴史を端的に描いたもので興味深い。と同時に、生成AIがNTTデータのようなシステムインテグレーター(SIer)に及ぼす影響が相当大きいことを物語っている。
同社の説明を聞き、かねてより抱いていた疑問が筆者の頭に浮かんだ。生成AIが従来のノーコード開発ツールを代替するのではないか――。筆者が着目しているのはエンジニアではなく、DX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組みの中で現場で働くビジネスパーソンが使うノーコード開発ツールが生成AIによってどのような影響を受けるかだ。
上記のNTTデータのソフトウェア開発を巡る話はエンジニアが対象であるように受け取れるが、「海外を含む当社の全従業員19万5千人が標準利用できるようにすることを目指す」という村上氏の発言は、現場で働くビジネスパーソンを対象にしているようにも解釈できる。
そこで、会見の質疑応答で「生成AIはノーコード開発ツールを代替するのか」と単刀直入に聞いてみた。すると、村上氏は次のように答えた。
「その見方については現時点で意見が分かれるところだろう。われわれとしては、用途によって使い分けたり組み合わせたりしてより生産性を上げられるように取り組んでいる」
どうやら、生成AIによってエンジニアの生産性が向上するのは明らかだが、ビジネスパーソンの生産性が向上するかどうかはまだ不明なところがあるといった感じのようだ。
異なる見方はないのかと、「ChatGPT」にも同じことを聞いてみた。すると次のような回答が返ってきた。
生成AIは一部のノーコード開発ツールの一部機能を代替する可能性がありますが、完全に代替することはできません。ノーコード開発ツールは、非プログラマーや技術的な知識が限られた人々がソフトウェアやアプリケーションを開発するためのツールです。一般的に、ノーコード開発ツールはビジュアルなインタフェースやドラッグアンドドロップの操作を提供し、コーディングの知識がなくてもアプリケーションを作成できるようにします。
一方、生成AIは自然言語処理やコンピュータビジョンなどのタスクに特化したモデルであり、主にテキストや画像の生成に利用されます。生成AIは、テキストの要約や翻訳、文章の生成、画像の生成などのタスクにおいて優れたパフォーマンスを発揮します。
ノーコード開発ツールは主にアプリケーションやWebサイトの開発に使用されますが、生成AIは主にテキストや画像の処理に使用されます。生成AIは特定のタスクにおいて高い精度を持つ一方で、ノーコード開発ツールはより柔軟な開発が可能です。
従って、生成AIはノーコード開発ツールの一部機能を補完できる可能性がありますが、完全に代替することは困難です。両者は異なる目的と利用シナリオを持っており、互いの長所を生かすことが重要です。
以上、少々読みやすいように整えただけで、ほぼ原文通りである。最初の一文だけを取り上げようかと思ったが、今回の疑問に的確に答えていると感じたので、あくまで「参考」として掲載しておく。
(注2)多様なデータを連携させて根拠ある回答文を作成する生成AIサービスを提供開始
著者紹介:ジャーナリスト 松岡 功
フリージャーナリストとして「ビジネス」「マネジメント」「IT/デジタル」の3分野をテーマに、複数のメディアで多様な見方を提供する記事を執筆している。電波新聞社、日刊工業新聞社などで記者およびITビジネス系月刊誌編集長を歴任後、フリーに。主な著書に『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。1957年8月生まれ、大阪府出身。