なぜ漫画『ドラゴン桜』が「日本型ハイパーオートメーション」のヒントになるのか?(1/2 ページ) – ITmedia エンタープライズ
なぜ漫画『ドラゴン桜』が「日本型ハイパーオートメーション」のヒントになるのか?(1/2 ページ)
オンプレシステムを採用している企業が多い日本。自動化を実現するために企業が何をすべきかを考える上で、日立ソリューションズの松本氏は人気漫画『ドラゴン桜』がヒントになるという。問題を抱える生徒が東京大学を目指す漫画と、自動化を目指す日本企業の自動化の間にどのような関連性があるのだろうか。
[谷崎朋子,ITmedia]
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データのデジタル化や業務プロセスのICT化が進み、クラウドサービスの活用も進んだが、データやサービスは部門ごとにサイロ化し、連携すらできていない――。こうした企業は多いのではないか。サービスやシステムの数だけ業務フローが複雑化し、業務負担は重い。こうした悩みを抱える企業にとって「自動化」が一つの解決方法となるかもしれない。
サービスを連携してデータ処理を自動化することで点在、孤立していた知見が集約され、新たな価値が生まれ、その先にはDX(デジタルトランスフォーメーション)の実現も見えるだろう。
本記事は、2022年7月27日に実施されたオートメーション・エニウェア・ジャパン主催「自動化プラットフォーム サミット」におけるトークセッションを基に編集部で再構成した
前回(注1)の記事では日立ソリューションズの松本匡孝氏とフジテックの友岡賢二氏(専務執行役員、デジタルイノベーション本部長)のトークセッションから、フジテックのAPI連携の活用によるモダナイゼーションの事例と、米国のある企業におけるiPaaS(Integration Platform as a Service)を活用した人事部門の入社手続きの自動化の事例を紹介した。
今回は人気の漫画『ドラゴン桜』から得た“ヒント”を基に、日本企業でいかに自動化を実現するか、その方策を説明する。後半ではオートメーション・エニウェア・ジャパンが提供する自動化プラットフォームと、これから目指すべき「究極の自動化」への道筋を紹介する。
RPA導入で実現する「日本型ハイパーオートメーション」
日本企業はカスタム仕様でスクラッチ開発されたオンプレシステムを採用しているケースが多い。API連携を前提としないオンプレシステムを使う企業が、クラウドサービスを導入する企業と同様の自動化システムを実現するためにはどうすればよいのか。
セッション「『ドラゴン桜』に学ぶ “日本型ハイパーオートメーション”実現方法~最新テクノロジーと活用のポイントご紹介」の中で、松本氏は「漫画『ドラゴン桜』にヒントが隠されている」と述べた。
『ドラゴン桜』(三田紀房作)は、経営難に陥った学校を超進学校として再建するため、主人公の桜木弁護士が問題を抱える高校生たちとともに東大合格を目指すストーリーだ。桜木はそれぞれの学生の強みを引き出し、実力に適した勉強方法を取り入れることで成績アップを狙う。
松本氏は「これこそ日本型ハイパーオートメーション成功のヒントだ」と述べ、その理由を次のように説明した。
「日本企業ではそれぞれの事業部門が業務の自動化を図る傾向があり、RPAや「Microsoft Excel」マクロによる自動化が普及している。つまり、RPAの経験という強みを生かして既存のシステム環境との連携を工夫すれば、iPaaSの完成形に近い自動化環境が実現できるということだ」
松本氏は、前提として「人事管理システムもITサービス管理システムも、全てオンプレシステムであったとしても問題ない」と述べ、提案を具体的に落とし込んだ図を紹介した。
iPaaSとRPAを組み合わせた自動化の事例(出典:日立ソリューションズ 松本氏の講演資料)
人事管理システムに社員情報を登録すると、RPAが情報をクラウドストレージにエクスポートする。これをトリガーに別のRPAが起動してデータを各システムに送信する。手配や登録が完了したら、さらに別のRPAがマネジャー宛てに状況を自動通知する。
このようにRPAでサービス間の自動連携を補助することで自動化の恩恵を享受し、システムのモダナイゼーションが進んだ段階でRPAを使わずにiPaaSによる自動連携に移行する。これが松本氏の提案だ。
「RPAの導入は日本企業にとって、iPaaSの序章として有効な選択肢だ」(松本氏)
日本型ハイパーオートメーションを支える2つの製品とサービス
このような取り組みを、日立ソリューションズでは2つの製品とサービスでサポートする。
一つは、iPaaS製品「Workato」(ワーカート)だ。クラウドサービスとの400以上のコネクターを標準装備する他、社内システムとつなぐためのカスタム可能なコネクターも用意している。チャットbotも標準対応するなど、さまざまなサービスと連携可能なハブとなる。
iPaaS製品「Workato」(出典:日立ソリューションズ 松本氏の講演資料)
もう一つは、「RPA業務支援BPO(Business Process Outsourcing)サービス」だ。ユーザーからの問い合わせ対応やサーバ管理、実行エラーの検知と対応といったRPA運用に必要な業務を代行する「基本セット」と、開発者トレーニングやワークショップ支援、ガイドライン策定、ロボット開発など、必要な業務を適宜代行する「オンデマンドセット」を用意する。PoC(概念実証)開発から全社展開までの全過程で生じる課題の解決をフルサポートする。
自動化プラットフォームが完成するだけでDXが実現するわけではない。松本氏は「DX推進に向けた企業文化や従業員のマインドセットを育み定着させる『CX』(Corporate Transformation)と、仕事に対する充足感やスキルアップを高める『EX』(Employee Experience)が効果的に絡み合い、相乗効果を生むことがDX成功の可能性を高める」とコメントした。その中でDXとEXは企業が取り組む領域だが、「CXはベンダーのDXや自動化製品、ソリューションとSIerがサポートできる領域だ」と述べた。
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[谷崎朋子,ITmedia]
オートメーション・エニウェアのRPAソリューション
ここまで、オンプレミス環境にある企業が自動化に踏み出すための方策を見てきたが、DX推進のための環境をある程度整えた企業に最適な自動化ソリューションも見てみよう。
オートメーション・エニウェア・ジャパン セールス・エンジニアリング事業部 ソリューション・コンサルタントの佐野千紘氏は「自動化におけるIT部門と現場の円滑な連携~鍵は『プラットフォーム』~」をテーマに語った。
同氏は「そもそもIT導入の目的は事務作業の効率化や自動化だったはずだ。なぜ今、改めて自動化にスポットライトが当たっているのか」と疑問を提示し、その理由を以下のように分析した。
「これまでプログラマーなどの専門家に任せるしかなかった専門性や技術力が求められる自動化、効率化のコーディングをプログラミング能力がない人でも組み上げることができるローコード/ノーコードのツールの登場により、市民開発が盛んになったからだ」
同氏がいわゆる「市民開発」を支えるツールの一つとして挙げるのがRPAだ。
「RPAで自動化を成功させるには、スケールとガバナンスを円滑に両立することが重要だ」と佐野氏は言う。スケールとは、使いやすいツールで目に見える効果を出すことで市民開発の輪が広がっていくこと、ガバナンスは好き勝手に作成、乱立するbotを野放しにせずに管理と統制を図ることを指す。
「前者をアクセル、後者をブレーキとすると、一見相反するが、この2つの要件を両立させるのがオートメーション・エニウェアの自動化プラットフォームだ」(佐野氏)
スケールとガバナンスの相反する要件を両立するオートメーション・エニウェアの自動化プラットフォーム(出典:オートメーション・エニウェア・ジャパン 佐野氏の講演資料)
それぞれ具体的に見ていくと、まずスケールの使い勝手の部分については次の3種類のビューを用意することで対応する。
- フロービュー:部品(アクション)を組み合わせて操作の詳細を指定するだけで利用可能。IT未経験者にもやさしい開発画面
- リストビュー:操作の詳細情報を自然言語で分かりやすく記載し、全体を俯瞰(ふかん)できる画面
- デュアルビュー:フロービューとリストビューを並べて表示させる画面
「初心者から上級者まで、自分にとって使いやすい開発画面を自由に選択できるのが特徴だ」(佐野氏)
初心者から上級者まで使えるユニバーサルな開発画面(出典:オートメーション・エニウェア・ジャパン 佐野氏の講演資料)
ガバナンス(統治)については開発状況の可視化で対応する。同製品の管理者用画面と開発者用画面は編集モードと参照モードの違いのみで、管理者も開発者と同じ情報を参照できる。自動化が進むと何が実行されているのか分からなくなる「ブラックボックス化」が課題となるが、オートメーション・エニウェアは自動化によって業務を可視化することで、ブラックボックス化を排除するという。
開発者と管理者が同じレベルの情報を見ることが可能(出典:オートメーション・エニウェア・ジャパン 佐野氏の講演資料)
同社の製品ラインアップのうち、自動化実装を支援するのが「RPA Workspace」だ。この他、同社は自動化のポテンシャルをユーザー操作から可視化する「Fortress IQ」、アナログなやりとりをデジタル化する「Document Automation」、効果をデータ分析する「Bot Insight」などを提供している。これらを組み合わせることで総合自動化プラットフォームが完成するとしている。
オートメーション・エニウェアの自動化プラットフォームを構成する製品ラインアップ(出典:オートメーション・エニウェア・ジャパン 佐野氏の講演資料)
同社 カントリーマネージャー 日本営業統括の由井希佳氏は「人のためのタスクオートメーションから始まった自動化の取り組みは今、自律的かつインテリジェントな『究極の自動化』へと向かって歩み始めた」と述べる。「究極の自動化」を成功させるには、企業とベンダー、SIerが三位一体となって取り組むことがカギとなる。この組み合わせがはまったとき、日本のDXがさらに進展するのかもしれない。
(注1)日立ソリューションズとフジテックのトークセッションから考える 自動化はDX推進の解決策になるか?
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