東証の取引は兆単位 停止「日本の将来に関わる問題」
聞き手・真海喬生
2020年10月1日 18時28分
東京証券取引所の障害について、謝罪する宮原幸一郎社長(中央)ら=2020年10月1日午後4時30分、東京都中央区、嶋田達也撮影
東京証券取引所で1日、システムトラブルが起こり、終日すべての株式の取引が停止しました。取引が止まると、社会にどんな影響があるのでしょうか。金融システムに詳しい埼玉学園大の相沢幸悦・特任教授に聞きました。
――証券取引所という大金を扱う場所でシステムにトラブルが起きたことに驚きました。
「まったく同感です。東証で1日に取引される金額は兆単位です。そんな金額がなんの疑問も抱かれず毎日取引されているのは、ひとえに取引所が信頼されているからです。株を売買してもうかったり損したりすることはみんな想定していますが、取引できないことは想定しません。終日、売買を停止したことは大きな驚きです。それに、東証の説明も遅かったと思います。朝から売買が止まり、詳しい原因がわからないまま夕方になりました。投資家にとっては不安な状態でした」
「東京は国際金融都市構想を掲げていますが、こうした戦略に悪影響があるでしょう。外国人投資家にしてみれば、急に取引ができなくなる可能性のある取引所は使いたくありません。国際金融都市なんて口だけじゃないかと言われかねません。アジアなら、シンガポールに取引の拠点を移す投資家も出てくるでしょう。日本の将来にも関わる問題です」
――そもそも、証券取引所とはどういうことをしているのですか。
「取引の『場』の提供です。個人でも機関投資家でも、通常は証券会社を通じて株式の売買を注文します。例えば、Aという会社の株式を100円で買いたい投資家がいるとします。さらに、たくさんいる投資家の中に、その株を100円で売りたい人がいたとします。両者をつないで売買を成立させるのが取引所の役割です」
「取引所が止まるということは、こうした取引が一切できなくなるということです。売買の機会がなくなれば、本当は株を売りたいのに売れない、という事態が起こります。損害賠償問題に発展する可能性もあります」
――以前にも東証は取引を全面的に停止したことがあります。
「残念な限りです。もっと人材…
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