「中国撤退」補助金に日本企業殺到! 経産省が国内回帰後押し、新たに予算要求の意向 習主席「脱中国」否定に躍起

10/2(金) 16:56配信

175

 日本企業の中国離れが一段と加速する。サプライチェーン(部品の調達・供給網)を中国などから国内に戻したり、他の地域に移したりする際に補助金を支給する経済産業省の制度に応募が殺到しているのだ。中国メディアは懸念の打ち消しに躍起だが、経産省は来年度に向けて新たに同制度の予算要求を行う意向だ。菅義偉政権になっても多くの日本企業にとって「脱中国」の方向性は変わらない。

 経産省は、新型コロナウイルスの感染拡大によって、サプライチェーンの脆弱(ぜいじゃく)性が顕在化したとして、国内の生産拠点の整備などを進め、サプライチェーンの強化を図る目的で工場の新設や設備の導入を支援している。

 公募は5月22日から開始し、先行締め切りでは57件、約574億円が採択された。中小企業だけでなく、塩野義製薬やシャープなどの大企業も名を連ねている。生活用品大手のアイリスオーヤマ(仙台市)は、補助金によって、中国の大連工場(遼寧省)と蘇州工場(江蘇省)に加え、新たに角田工場(宮城県)でのマスクの生産ラインを稼働させた。

 さらに7月22日までの2カ月間には1670件、約1兆7640億円分の申請があった。予算額(残り約1600億円)に対し、約11倍の応募があったことになる。外部有識者による第三者委員会で審査され、10月中に採択先が発表される予定だ。

 日本企業が雪崩を打って中国から逃げだそうとしている構図にも見える。

 第一生命経済研究所主席エコノミストの西濱徹氏は、「新型コロナウイルスの影響だけでなく、米中摩擦がいつまでも続いていることで状況が悪化した中国進出企業が経営の見直しを迫られている。完全に中国を切り離すことはできないものの、コストを抑えてリスクを分散する方法として補助金事業が注目されたことから応募が殺到しているのだろう」との見方を示す。

 習近平政権下では、中国で活動する海外企業のリスクがますます大きくなっている。知的財産権の問題に加え、香港や台湾、新疆ウイグル自治区などの人権問題にも欧米などが厳しい視線を向けているのが実情だ。

 こうした動きに対して中国共産党系機関紙、人民日報系の環球時報は今月17日、「1700以上もの日本企業が列を成して中国から撤退する真相」と題した記事で、「サプライチェーン対策のための国内投資促進事業費補助金」としての予算は2200億円にとどまり、積極的な中国離れにはならないとの見方を示した。

 海外在留邦人数調査統計によれば、中国の日系企業数(拠点数)は、3万3050社(2018年10月1日現在)であるため、公募は全体の5%に過ぎないとの見解も示している。

 他の中国メディアもこぞってこの記事を引用しているほか、韓国紙・中央日報も報じた。

 人民日報(日本語電子版)も18日、日本貿易振興機構(ジェトロ)のデータを引用し、対中投資が増加していると紹介するなどして、日系企業にとって中国に“魅力”があると強調した。

 中国が日本企業の撤退傾向を否定しようとする背景について、前出の西濱氏は「中国からすれば、政権が変わったタイミングで日本を見極めている。できれば中国に残ってほしいという思いが報道にも表れているのではないか」と推察する。

 今後の動向について西濱氏は「企業側は米中関係を注視せざるを得ない。政府側がそうした企業の状況を鑑みて、補助金の幅を広げる可能性はある」と指摘した。

 経産省は、今回の補助金制度について「これだけ多くの応募があるとは思わなかった」とした上で、「多方面から事業を継続すべきだという声は受けている。来年度に向けては新たに予算要求をする予定」との意向を示した。

 菅政権でも日本企業の国内回帰の動きは継続しそうだ。

最終更新:10/2(金) 20:00

夕刊フジ

Click to rate this post!
[Total: 0 Average: 0]

Leave a Reply