中国海軍、瀬取り監視を牽制 増強裏付け、包囲網に警戒
北朝鮮による洋上での違法な物資の移し替え「瀬取り」への対策として日米両国などが東シナ海で実施する警戒監視活動に対し、中国軍艦艇が牽制する動きを強めていることが19日、分かった。自衛隊や米軍の艦艇それぞれに1隻ずつ張り付け、追尾する活動が常態化しているという。これとは別に展開する艦艇を加えれば、多いときで中国艦10隻以上が東シナ海を航行しており、中国海軍の増強を裏付ける形となっている。
複数の政府関係者が明らかにした。自衛隊と米軍の艦艇それぞれ2隻、オーストラリア軍や英軍などが瀬取り監視に参加した際の1隻を加えた計5隻が監視活動を行う場合、中国艦がそれぞれに一定の距離を取って航行。最近では平成25年11月に中国が一方的に設定した防空識別圏の海域に日米艦などが入れば、ほぼ同時に中国艦が現れて追尾を開始するという。
国連安全保障理事会で北朝鮮への制裁決議の履行状況を監視する専門家パネルは今年3月、中国の「はしけ船」が瀬取りに関与した事例や、北朝鮮の石炭が中国の港に搬送された事例を報告している。中国艦が瀬取り監視を牽制(けんせい)しているのは、中国の船などに生じる不測の事態に備える一方、日米を中心とした中国包囲網の形成を牽制する思惑もあるとみられる。
中国艦は東シナ海で、尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺に2隻が常時展開して不測の事態に備えているほか、独自の活動をしている米艦を追尾。これに演習などで航行する艦艇を加えれば、最大10隻以上の中国艦が東シナ海に展開している。米国防総省は中国軍の保有艦艇が世界最大の約350隻に達したと分析しており、瀬取り監視への牽制を含む活発な活動は中国海軍の増強を裏付けている。
瀬取り監視は日米両国のほか、韓国、オーストラリア、英国、フランス、カナダ、ニュージーランドが参加している。米海軍第7艦隊の旗艦ブルーリッジに「執行調整所(ECC)」が設置され、各国軍の艦艇や哨戒機、衛星が集めた情報の共有や活動調整を行っている。
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瀬取り 違法物資を船から船に移し替えて行う密輸。北朝鮮は核・ミサイル開発への制裁措置として国連安全保障理事会決議で禁止された石油の輸入や石炭の輸出を瀬取りで行っている。安保理は平成29年9月に瀬取り自体も禁止する決議を採択。日米韓など43カ国が7月に安保理委員会に提出した文書は、1~5月の北朝鮮による瀬取りは計56回で、輸入量は160万バレル以上としている。