習氏「数カ国で命令出せぬ」 バイデン政権の同盟強化牽制
25日に開幕したWEF主催のオンライン会合「ダボス・アジェンダ」で講演する中国の習近平国家主席=北京(新華社=共同)
【北京=三塚聖平】中国の習近平国家主席は25日、シンクタンク「世界経済フォーラム」(WEF)が開いたオンライン会合「ダボス・アジェンダ」で講演し、国際社会の課題について「一つの国や数カ国が命令を出すことはできない」と強調し、同盟国との連携強化を図り、世界で米国の指導的立場の回復を目指すバイデン米新政権を牽制した。
バイデン大統領が20日に就任後、習氏が国際的な舞台で発言するのは初めて。会合は29日まで。ドイツのメルケル首相やフランスのマクロン大統領らも出席する予定で、菅義偉首相も参加の方向で調整している。
習氏は、トランプ米前政権が進めた貿易戦争を「最後には各国の利益を損なう」と批判。「デカップリング(切り離し)や制裁を行えば、世界を分裂や対立に向かわせるだけだ」とも述べた。前政権の強硬路線を継承しないようバイデン政権にくぎを刺した形だ。
気候変動問題や新型コロナウイルス流行への対応では積極的な姿勢をアピールする一方で、「違いを尊重し、他国の内政に干渉すべきでない」とも主張した。香港問題など中国の人権問題に厳しい態度で臨む見通しのバイデン政権の出方を注視しているもようだ。
習氏は、20カ国・地域(G20)について「世界経済を管理する主要なプラットフォームの地位を強固にすべきだ」とも訴えた。中国は、先進7カ国(G7)首脳会議(サミット)に韓国とオーストラリア、インドの3カ国を加えた「民主主義10カ国」(D10)などの対中連携を念頭に置いた新たな枠組みを警戒しており、自国も加わるG20の存在を強調している。
習氏は2017年1月にスイスを訪問し、WEFの年次総会であるダボス会議に参加。当時は米国のトランプ前大統領の就任直前で、習氏は基調講演で「経済グローバル化の利点を共有できるようにしなければならない」などとトランプ氏を念頭に呼び掛けている。
バイデン政権の発足を控えた昨年12月には、中国共産党の理論誌「求是」にこの講演内容を唐突に再掲載しており、米国に対するメッセージが込められているとみられる。