【主張】韓国の米中外交 同盟分断の思惑に乗るな

4日、バイデン米大統領と電話会談する韓国の文在寅大統領=ソウル市内(韓国大統領府提供・共同)

 米国のバイデン大統領と韓国の文在寅大統領が初の電話会談を行い、日韓関係の改善と日米韓の協力が「地域の平和と繁栄にとって重要である」ことを確認した。

 文氏は会談後、ツイッターで「共通の価値に基づく韓米同盟をもう一段階アップグレードしようと約束した」と明らかにした。

 言葉だけでなく、「共通の価値」に沿った行動を文氏が実際に取ることを期待したい。

 そこで気にかかるのは、先立って1月下旬に行われた中国の習近平国家主席との中韓電話会談だ。習氏は、朝鮮半島の非核化実現は中韓「共通の利益」になるとして、文氏の対北朝鮮政策に積極的な支持を表明したという。

 北朝鮮との融和を最重視する文氏には後押しの言葉として心地よく響いたであろう。

 中国側の発表によると、文氏は「中国共産党創立100周年を心からお祝いする」「中国の国際的な地位と影響力は日々強まっている」と習氏を称賛したという。

 発言が事実なら、香港や新疆ウイグル自治区で弾圧を強める中国共産党を民主主義国首脳が擁護したとも取られ、米国からも疑問の声があがっている。

 中国には、米韓会談が実現する前のタイミングで対中包囲網に韓国が参加しないよう働きかける狙いがあったと指摘されている。

 会談前日には習氏はオンライン会合「ダボス・アジェンダ」で、米国を念頭に「『新冷戦』で他国を脅かし、デカップリング(切り離し)や制裁をすれば、世界を分裂、対抗に向かわせるだけだ」と発言した。

 北朝鮮の核・ミサイルの脅威の最前線に位置し、自国の安全保障を米国に頼る韓国が中国に傾斜していくことは何の利益ももたらさない。そのことは朴槿恵前政権が証明している。

 朴氏は対中接近を進め、中国と「蜜月」といわれる関係を一時築いたが、米軍の最新鋭迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」導入決定後、中国側から手ひどい経済報復を受けた。米中と等距離でやっていくというご都合主義の外交は成り立たない。

 バイデン氏は中国の「攻撃的で強圧的な行動」に対抗していくと表明した。文氏には、中国が仕掛ける分断を排除し、日米韓結束を実現する責任が問われている。

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