体調異常・居眠りを検知 マツダの新技術「コ・パイロット」に期待すること

11/12(金) 19:21配信

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<ドライバーの体調や操作をモニタリングして、異常があれば緊急通報し、ドライバーの代わりに安全な場所まで運転してくれる──事故を減らし、運転寿命の延伸に寄与する技術を、マツダが世界に先駆けて発表した>

筆者が試乗した「MAZDA CO-PILOT」を搭載した車両 写真提供:マツダ

11月4日、高齢化社会の自動車の運転を変える大きな発表があった。ドライバーの病気などの体調異常や居眠りを検知し、高速道路のみならず、一般道でも、安全な場所に自動車を退避させる「MAZDA CO-PILOT(マツダ コ・パイロット)」という運転支援技術の発表だ。他社に先駆けたマツダの動きで、高級車クラスのみならず、全車種に標準的に搭載していく考えだ。【楠田悦子(モビリティジャーナリスト)】

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スバルが衝突軽減ブレーキ「アイサイト」を世に生み出し、今では軽自動車にも搭載されるようになった。ドライバー異常検知と路肩退避の技術をマツダが先行して普及させ、それに他社が追随するかたちで普及していくのではないかと予測する。事故を減らし、運転寿命の延伸に寄与する新たな安全技術の登場に期待が膨らむ。

写真提供:マツダ

<MAZDA CO-PILOTとは?>

MAZDA CO-PILOTは、姿勢の崩れ、視線・頭部の挙動、ハンドル・ペダル操作量からドライバーの体調や操作をモニタリングして、異常があった場合に緊急通報し、ドライバーの代わりに運転をして、安全な場所に連れて行って停車させてくれるというものだ。

コ・パイロットは、副操縦士という意味。ドライバーが自らの意思で運転し、自由に移動する「人間中心の安全技術」の開発を大切にしており、パイロットであるドライバーを支えるよき理解者(パートナー)をつくりたいという思いが込められている。

「MAZDA CO-PILOT 1.0」を2022年から、「MAZDA CO-PILOT 2.0」を2025年から市場投入するロードマップを描いている。

マツダのメディア向け試乗会で、高速道路と一般道におけるドライバー異常の検知、緊急通報、路肩退避まで、スムーズな流れを体験することができた。実用化はすでに可能だと感じる。これからさらに精度を高めていくようだ。

ガイドライン策定で他社と連携>

実は自動運転が注目されるようになった2018年頃から、マツダのみならずデンソーや大型車・二輪を含む自動車メーカーと国土交通省は、各社の代表者を集めて、先進安全自動車(ASV)の延長で業界横断的に「ドライバー異常・監視技術の基本設計書(ガイドライン)」について密に議論を進めてきた。

「MAZDA CO-PILOT」の開発担当者でマツダ商品戦略本部主査の栃岡孝宏氏もその一員で、次のように語っている。

「ドライバー異常を検知する技術は国内外を見ても他社には事例がまだない。今回マツダが世界に先駆けて発表することになった。膨大な(脳血管疾患などの)患者のデータを分析し、クルマの運転行動に置き換えていくといったアルゴリズムは独自に開発していく必要がある。この部分がマツダ独自になる」

次ページは:<自動運転技術に対する考え方はメーカーごとに異なる>

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最終更新:11/12(金) 19:21

ニューズウィーク日本版

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<自動運転技術に対する考え方はメーカーごとに異なる>

普及期になると日本の自動車メーカー間で連携し、社会貢献していく共通のガイドラインを各社は持っている。それにもかかわらず、ドライバー異常を検知する技術を他社が出さないのはなぜか。

それは、自動車メーカーごとに自動運転技術に対する考え方が異なるからだ。メディアが注目し、多くの自動車メーカーが現在挑戦している技術は、ドライバーはまったく運転せず、自動車がドライバーに代わって運転するというもの。

マツダはあくまでドライバーが自らの意思で自動車を運転し、体調・操作をモニタリングしながらその運転を支えるパートナーとして安全技術を使っていこうと考えている。

筆者は安全技術や自動運転について取材を続けているが、周知の通り、完全にドライバーの代わりをするような自動車を誰もが手にする時代は随分先になると見ている。今現実的に必要とされる安全技術は、高齢ドライバーが増える中で、彼らが自らの意思で自動車を運転する期間(運転寿命)を延伸させ、移動と暮らしの自由を支える技術だと考える。

マツダのドライバーの異常や予兆を検知する技術は、病気や衰えによる姿勢の崩れ、視線・頭部の挙動、ハンドル・ペダル操作量などの運転行動から分析する技術だ。そのため認知症の予兆、バスやトラックドライバー間で問題となっている睡眠時無呼吸症候群の予兆なども拾い出すことができる。

<運転スキルの確認、家族による見守りが可能に>

高齢ドライバーのいる家族からは「父母の運転は大丈夫だろうか」「そろそろ運転をやめてほしい」、また本人から「いつまで運転できるか心配だ」との声を多く聞く。日本の仕組みの中には、免許更新時に高齢者講習などがあるものの、いつまで運転していいのか客観的にスキルを測定して知ったり、見直したりする機会が一般的にない。本人や家族らによる主観的な判断により、運転免許証を返納している。

日々の運転行動をモニタリングし、スマートフォンなど見やすいインターフェースで本人や家族が確認できるようになれば、運転スキルの見直しや家族による見守りも可能となる。そうなれば、運転しながら自分の生活を楽しむ時間が少しだけ長くできるかもしれない。2025年以降にはこうしたことがMAZDA CO-PILOTで実現できるという。

さらには、日々の運転行動のデータを提出して運転適性を証明するなど免許更新の仕組みを変える可能性もある。

このように新しく日本で生まれたドライバー異常や予兆を検知する技術は、大きな社会問題となっている高齢者の事故や免許返納問題へ貢献する技術として非常に興味深い。できるだけ早くマツダが普及させ、他社も協調しながら追随し、安全でできるだけ長く自由な移動を楽しめる社会を実現させてほしいと思う。

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