企業はWeb3の新規事業創出にどう取り組むべきか NEC、MUFG、ホンダの見解は?:WebX開催

CoinPost主催のカンファレンス「WebX」。初日のセッションでは岸田首相のビデオ登壇に加え、日本を代表する大企業がWeb3事業のノウハウを解説した。

[関谷祥平ITmedia]

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 ブロックチェーンメディアのCoinPostは2023年7月25~26日にかけて、グローバルカンファレンス「WebX」を開催している。本稿は大企業向けセッション「大企業におけるWebマーケティングとウォレットソリューション」をレポートする。


WebXが開催(筆者撮影)

まずは岸田首相がビデオ登壇 改めて強調したこととは

ビデオ登壇した岸田文雄首相

 基調講演では岸田首相がビデオ登壇し、日本におけるWeb3に向けた環境整備に取り組んでいることをアピールし、以下のように話した。

 「日本政府は2023年6月に『経済財政運営と改革の基本方針2023(骨太の方針2023)』を閣議決定しました。利用者保護などにも配慮し、トークンの活用やコンテンツ産業の活性化にかかる環境整備、担い手やアイデアの裾野の拡大などを盛り込んでいます。WebXを通じて、Web3業界に注目とエネルギーを取り戻すさまざまなプロジェクトが生まれることを期待しています」

 日本政府がWeb3に本気になっていることは間違いない。Web3が社会に浸透し、定着するにはスタートアップ企業の取り組みに加えて大企業の市場参入が欠かせない。

「大企業におけるWebマーケティングとウォレットソリューション」

 大企業におけるWebマーケティングとウォレットソリューションでは、NECの樋口雄哉氏(ディレクター)がモデレーターを務め、三菱UFJ銀行(以下、MUFG)の松原陽一氏(経営企画部 部長)、本田技研工業(以下、ホンダ)の三上真司氏(チーフエンジニア)、ブロックチェーンサービスを提供するアニモカブランズ(以下、アニモカ)の三塚英毅氏(COO)が「エンタープライズがWeb3事業」について語った。

樋口氏 そもそも皆さんはどうしてWeb3事業に着手するに至ったんですか?

三上氏 ホンダはもともとデジタルとつながりが強い企業でした。Web3は「流動性の高いデジタル価値の創出」が強みであり、F1のエンジンなどと絡めて何か面白い企画ができないかと思ったのがきっかけです。

三塚氏 Web3はデジタル資産の確立や流動性といった特徴がありますが、これらの実現にはそもそもの“母数”が多くなければなりません。ホンダ様とは以前、米国の車イベントでブロックチェーンを用いたクエストのようなゲームを参加者に対して実験的に行い、ホンダブランドの認知拡大や可視化を行いました。

樋口氏 Web3に関して新規ビジネスを考える際、「PoC(概念実証)は作成したが実際には取り組めなかった」という話もよく聞きます。このような課題はどのように乗り越えましたか?

三上氏 新規事業の創出は正直難しいです。既存ビジネスが好調だと、なかなか上層部に話が響かないことも多いです。最初は現場レベルかつ自社ビジネスに影響を与えない範囲でスタートすると良いでしょう。その際は広報部や法務部とのネゴシエーションが重要です。

三塚氏 Web3で新規ビジネスを立ち上げる際は、「将来的なビジョン」や「従来の課題をWeb3でいかに解決するか」を明確にしましょう。そうすることで組織的に推進しやすくなります。

松原氏 銀行という立場からさまざまな企業様と話をします。多くの企業がWeb3に興味を持っていますが、「ビジネス化が困難」というのが正直なところのようです。MUFGはWeb3サービスの利用に必要なウォレットの提供や機能追加を行い、ユーザーの利便性を向上したいと考えています。

樋口氏 Web3における新規事業の創出は他の新規事業の創出とどう違うと思いますか?

三上氏 先ほども言いましたが、やはり流動性が違います。サービスやプロダクトを提供する際、Web3であれば流動性が高く、さまざまな可能性があります。一方、流動化のメリットを享受するには幅広いポートフォリオが必要で、これを満たすには企業間の連携が欠かせないでしょう。実際にホンダでは私が独断でWeb3事業に取り組んでいる感じで、組織的な取り組みにするのは簡単ではありません。 

松原氏 伝統的なビジネスモデルのみでは生き残れません。銀行は新規事業を考える際、簡単という理由で金融的なサービスを作りがちです。これでは他社との差別化は難しいです。一方、完全に違う業態のサービスに挑戦するのも簡単ではありません。Web3は幅広い業態でありながら金融とも親和性が高く、銀行としては挑戦しやすい業界だと言えます。現在はAI(人工知能)がブームで、社内では「いつまでWeb3をやるのか」という声もありますが(笑)。現在は顧客とのタッチポイントのほとんどが電話や支店で起きています。ただ、これらはデジタル化する社会の中で失われていきます。Web3で新たなタッチポイントを作りたいです。

三塚氏 Web3の新規事業が面白い点は、さまざまな企業と「何を目指すのか」「どう取り組むか」を考えながら取り組める点もありますね。

樋口氏 政府もWeb3を提唱している。数年前にWeb3というと「何を言っているんだ」という反応をされましたが、今では政府も積極的に取り組みを推進しており、まさに社会に受け入れられてきてますよね。

三塚氏 新たな業界で成功するには“経験”が欠かせません。小さく始めて経験を積み、それを生かしていくという認識を企業は持たなければなりませんね。

左から三塚氏、松原氏、三上氏、樋口氏

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