生成AIは人間が思うほど賢くはないが、人間も同じだ:Gartner Insights Pickup(316)

生成AIのチャットエンジンから一見知的な返答があったと書くと、専門家から「単なる余興」「予測アルゴリズムの産物にすぎない」などとたしなめられる。だが、人間の知性は生成AIと比べてはるかに高いレベルにあるという、われわれの認識は正しいのだろうか。

[Craig Roth, Gartner]

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 生成AIベースのチャットエンジンから、一見思慮深く知的な答えが返ってきたときの喜び(見方によっては恐怖)について少しでも書くと、AIの専門家からすぐさまこんな風にたしなめられる。「それは単なる余興」「次に来る可能性が高い単語を予測しているだけ」「予測アルゴリズムの産物にすぎない」

 確かにその通りだ。だが、こうしたAI専門家のコメントを読めば読むほど、「人間の知性はChatGPTなどの生成AIと比べて、はるかに高いレベルにある」という私たちの認識を疑わざるを得ない。

 機械に私たち人間の思考を模倣するよう教えることは、私たちが「どのように考えるのか」を学ぶのに役立つ。また、機械は株式の銘柄選択であれ、手紙の作成であれ、何らかの作業を肩代わりしてくれる。言葉を連ねて文を作ることを学んでいる幼児も、一生懸命耳を傾けて何千もの例を学習しているパターンマッチングエンジンともいえる。

 生成AIが単語を一度に一つずつ推測することに関して言えば、私も取りあえず文章を書き始め、考えながら書き上げることがよくある。実際、このブログ記事は、私自身の思考プロセスの実験だ。それぞれの文を、文末をどうするか分からないままに書き始めているからだ。そして、入力した後で編集したり、単語を並べ替えたりすることは、自ら禁止している。ただし、1つ例外がある。「タイプミスをしたら、次の単語に進む前に修正してもよい」ということにしている。ChatGPTはタイプミスしないので、これは公平だと思う。

 「ChatGPTは知的ではない」という主張は、実はChatGPTではなく、私たち人間についての見解の表明だ。それは、「『知的』とは何か」という自分なりの基準と、「周りの人の頭の中で何が起こっていると考えているか」を示しているに過ぎない。そう考えると、生成AIの考える能力を否定するのは、私たちが内省の機会を逃すことだと思う。

 さらに、それは私たち自身の能力について、謙虚になる機会を逃すことでもある。ここで気づいたのだが、前の文で「exercise」のスペルを間違えていたようだ。私はこんなミスをしがちだが、皆さんはいかがだろうか。

出典:Generative AI Is Not as Smart as People Think. But Neither Are We.(Gartner Blog Network)

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筆者 Craig Roth

VP Analyst

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