世界のクラウドサービス市場の成長率は16%に鈍化 AWS、Azure、Google Cloudの伸びしろはどこ?:市場規模は拡大、Canalysの調査

Canalysによると、2023年第2四半期のクラウドインフラサービス市場は前年同期比16%増の724億ドルとなった。2023年第1四半期の19%から低下した。

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 調査会社のCanalysは2023年8月10日(米国時間)、2023年第2四半期の世界のクラウドインフラストラクチャサービスの支出額を発表した。支出額は16%増の724億ドルで、2023年第1四半期の19%から低下した。

 Amazon Web Services(AWS)、Microsoft Azure、Google Cloudの成長率は計20%で、2023年第1四半期の22%から低下した一方、総クラウド支出の65%を占めている。個別に見ると、AWSとMicrosoftはともに成長率が鈍化したが、Google Cloudの成長率は31%と、前四半期に比較して安定している。


2023年第1四半期から2023年第2四半期のクラウドベンダー成長率の推移(提供:Canalys)

 ハイパースケーラーに対する米ドル高の影響は減少しつつあるが、マクロ経済の不確実性の高まりにより、顧客によるコスト削減目的でのクラウド利用の最適化は続いている。

 AI(人工知能)技術と既存製品への統合は、実用化の段階には至っていないため、クラウドプロバイダーの収益に大きな影響は見られない。しかし、AIは将来のクラウド投資の主要な原動力となるものであり、主要なクラウドベンダーはいずれもAI技術に多額の投資を続けている。

 AI技術の登場は、新たなクラウドワークロードをもたらし、コンピューティング容量に対する膨大な需要を喚起することで、クラウド成長の新たな機会を創出しようとしていると、Canalysは分析している。また2023年第2四半期は、AWSとMicrosoftの両社が新たなAI向けパートナープログラムを開始し、AI製品の顧客利用を促進するためのパートナーとの協業の重要性を認識したとも付け加えている。


AWS、Microsoft Azure、Google Cloudがクラウド支出額の6割を占める(提供:Canalys)

 Canalysのリサーチアナリストであるイー・ジャン氏と副社長のアレックス・スミス氏は次のように述べている。

 「最も一般的な協業モデルは、業界の専門知識、ビジネスプロセスの知識、データ分析の経験を互いに提供する関係にあるパートナーに該当する。クラウドプロバイダーは、パートナーに自社の新技術をいち早く提供し、技術サポートを提供する」(ジャン氏)

 「ベンダーは、パートナーを通じてAI戦略を推進する場合、AIを中心としたサービスプラクティスを構築する必要がある。AIに焦点を当てた営業やマーケティングやAIアプリケーションに関する独自のソートリーダーシップ、説得力のあるケーススタディーを作成し、販売パートナーと共有することが重要だ」(スミス氏)

AWS、Microsoft、Google Cloudの動向

 2023年第2四半期におけるAWS、Microsoft Azure、Google Cloudの動向は次の通り。

AWS

 AWSは2023年第2四半期もクラウドインフラサービス市場をリードし、前年同期比12%増で、クラウド総支出の30%を占めた。AWSの成長率は前年同期から半減しているが、AWSはAIへの投資を積極的に増やしている。2023年6月に開始した新しい生成AIプログラムには1億ドルを投資した。

 同プログラムの一環であるAWS Generative AI Innovation Centerは、無料のワークショップやトレーニングのハブとして機能し、AWSの技術と顧客やパートナーを結び付けながら、企業が生成AIベースのアプリケーション開発を加速させることを目的としている。

Microsoft Azure

 Microsoft Azureは、年率26%の成長で市場の26%を占め、2023年第2四半期には第2位のクラウドサービスプロバイダーだった。クラウドの受注残高が19%増加し、2023年第2四半期には2240億ドルに達したことから、業績は安定して上昇すると予想される。

 Azure OpenAIサービスの勢いは著しく、IKEA、Volvo Group、Zurich Insuranceなど注目すべき顧客を獲得している。AI需要の急増が予測されることから、MicrosoftはMicrosoft Inspire 2023において、AIクラウドパートナープログラムも発表している。Microsoftのパートナーエコシステムによる、MicrosoftのAI技術を活用したソリューション開発の促進を目的としたものだ。

Google Cloud

 Google Cloudのサーバとネットワーク機器の減価償却期間を延長するアプローチは、運用コストの抑制に役立ち、収益性強化に効果を上げた。Google Cloudのパートナーエコシステムは、生成AIアプリケーションの開発をサポートし続けている。Box、Salesforce、Snorkelを含む何百ものISV(独立系ソフトウェアベンダー)やSaaSプロバイダー、そしてグローバルSI企業の15万人以上が、Google Cloudの生成AIのトレーニングに取り組んでいる。

 Google Cloudによると、生成AIを専門とする急成長中の技術系スタートアップの70%以上の支持を得ているという。Cohere、Jasper、Typefaceといった企業が名を連ねており、スタートアップ企業がGoogle CloudのAI機能を信頼していることを物語っていると、Canalysは考察している。

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