製造業の「生成AI」導入で2033年までに105億米ドルの収益増加と予測 ABI Research:設計やMBOM、EBOM削減などで生成AI活用が進む
ABI Researchは、BMW、Boeing、ByteLAKE、General MotorsなどのメーカーとOpen AIなどの製造ソフトウェアプロバイダーの協業が進んでおり、今後、製造業の主要4分野で生成AIの導入が進むと予測した。
[@IT]
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ABI Researchは2023年8月30日(米国時間)、生成AIの導入により、製造業は2033年までに105億米ドルの収益増加が見込まれるとの予測を発表した。
生成AIは目覚ましい成長を遂げており、Microsoftなどの著名なテクノロジー企業は2023年、OpenAIに100億米ドルを投資している。製造業における生成AIの盛り上がりは、新しい設計の作成から最終的には生産プロセス全体のオーバーホールまで、さまざまな活用に向けた取り組みが始まっている。
ABI Researchによると、製造業は生成AIへの投資を、2026年から2029年にかけて44億米ドルと大幅に増やす予定だ。2033年までに、製造業における生成AIの使用から追加される収益は105億米ドルに達すると予測している。
ABI Researchの製造業アナリスト、ジェームス・アイバーセン氏は次のように述べている。
「生成AIは、さまざまな市場分野のそれぞれに特化した機能とユースケースで成長を遂げる。生成AIの導入は、テクノロジーが成熟するにつれて3つの波で進行し、製造業では第2波と第3波で最大の収益成長が見られることになる。この第2波と第3波では、生成AIは設計、エンジニアリング、生産、オペレーションという製造の4つの領域に導入されていくだろう」
製造業においてどの場面で生成AIが活躍するのか
ABI Researchによると、製造業における生成AIの活用は、設計やMBOM(製造部品表)やEBOM(設計部品表)の削減といったユースケースで主流になるのが最も早いと考えられるという。
シーメンスやMicrosoftなどの企業が既にソリューションを提供している一方、エンジニアリング、生産、オペレーションのユースケースは、タスクの複雑さとモデルのトレーニングの必要性のため時間がかかり、生成AIのプロバイダーがさらに成熟する必要がある。
製造業における生成AIのユースケースは、期待されるTTV(time to value=価値発揮までの時間)とROI(return on investment=投資対効果)を見て比較できる。上記の4つの領域で最も効果が高いのは次のユースケースだ。
- 設計分野:ジェネレーティブデザイン、部品統合
- エンジニアリング分野:ツールパスの最適化
- 生産分野:製品品質の原因分析、ソフトウェアコードのバグ修正
- オペレーション:在庫と購買期間の管理、従業員の作業経路の最適化
製造業企業と製造ソフトウェアプロバイダーはどちらも、上記の最も効果的なユースケースを優先すべきだとABI Reserchは指摘する。最も高いリターンをもたらす一方、既存の生成AI機能で容易に構築できるからだ。
「これらのユースケースをゼロから実装することで、より広範なユースケースの基礎が築かれる。現在の製造業務の重要な部分を全面的に見直す前に、生成 AIへの信頼を築く必要がある。そのため、早合点してほとんど実装されないような高機能なユースケースを開発しないことが重要だ」
2023年8月末時点で、BMW、Boeing、ByteLAKE、General Motors、Markforged、Nike、NVIDIA、SprutCAM Xなどのメーカーや製造ソフトウェアプロバイダー、NikeのCelect、Gradio、OpenAI、Retrocausal、Work Metrics、Zapata AIなどの生成AI企業の協力を得て、取り組みを開始している。
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