対中融資「卒業」を いまだ4番目の融資対象国 ADB総会で麻生氏

記者団の取材に応じる麻生財務相=17日、財務省

 麻生太郎財務相は18日、オンラインで開催されたアジア開発銀行(ADB)年次総会で、米国に次ぐ経済大国でありながら資金援助を受ける中国を念頭に、新興国向け融資の“卒業”に向けた具体的な道筋づくりを改めて求めた。大国と発展途上国の顔を都合よく使い分ける中国は、アジアインフラ投資銀行(AIIB)を主導するなどして国際金融の舞台でも影響力拡大を図る。ADB最大の出資国である日本の菅義偉(すが・よしひで)新政権にとって国際金融における中国問題への対応も課題となりそうだ。

 「所得のより低い国や脆弱(ぜいじゃく)な国に、支援を重点化していくことが必要だ」

 麻生氏は演説でこう主張し、ADBの限られた財源で支援を効果的に行うためには、中国など既に成長した国に対する融資を縮小すべきだと強調した。

 ADBの2019年の融資契約締結額のうち中国向けは10・6%に上り、上位4番目の規模となる。ADBの融資対象国の基準は1人当たりの国民総所得(GNI)で年約7千ドル(約73万円)が上限だが、中国は1万ドルの大台を上回って基準を大幅に超過している。

 ADBの融資対象から自立する基準には、GNIの上限のほか、市場から円滑に資金調達ができるかといった項目がある。韓国やシンガポールは既に対象からは卒業しており、中国も来年以降の融資条件の見直しに向け協議を進める。

 財務基盤が脆弱な国では医療体制の整備が遅れ新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかかっておらず、世界的な感染収束に向け治療薬やワクチンの普及を含め中長期的な支援が必要だ。ADBの主要株主でもある中国の卒業は、本当に支援が必要な低所得国により手厚く融資を行うためにも不可欠だ。

 日本としてはまず中国向け融資を抑え、使途を地球温暖化問題などに制限したい考え。中国との対立が激化する米国は日本と並ぶ最大級の出資国で、日米で歩調を合わせる思惑もある。

 巨大経済圏構想「一帯一路」を掲げる中国はAIIBを通じて途上国へ過剰に融資し、返済に窮した国からインフラを奪う例もある。コロナ禍ではマスク外交で逆にイメージアップを図るなど“焼け太り”を狙い、対中外交で比較的寛容だった欧州を含め反感が広がる。冷たい視線を察してか、融資対象から卒業する必要性は中国も理解を示しているようだが、ADBを主導する日本の指導力が一層問われそうだ。(林修太郎)

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