学術会議は「特別機関」、政府へ提言 国庫から年10億円予算

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 日本学術会議は、理系・文系を問わず全分野の科学者を代表し、科学政策の提言など担う機関として昭和24年に発足した。日本学術会議法に基づき首相が所轄し、国費で運営されているが、政府から独立して職務を行う「特別の機関」と位置づけられている。

 科学政策に関する政府への提言や勧告のほか、科学の啓発活動や国内外の科学者の交流促進なども行う。過去3回にわたり「科学者は軍事的な研究を行わない」とする趣旨の声明も出している。同会議は政府の4兆円の研究予算配分に一定の影響力を持つ。

 優れた研究や業績があるとされる科学者らから首相が任命する210人の会員と、会長から任命される約2000人の連携会員で構成される。いずれも非常勤で会員は特別職、連携会員は一般職の国家公務員となる。

 国庫から年間10億円以上の予算が計上され、令和元年度決算ベースでは、この中から会員手当として総額約4500万円、同会議の事務局の常勤職員50人に人件費として約3億9000万円支払った。会員任期は6年で、3年ごとに半数が入れ替わる仕組みだ。

 その選出方法は過去にたびたび変わってきた。当初は全国の学者による投票で選出され、「学者の国会」とも呼ばれたが、昭和58年には選挙への立候補者が減少。無投票当選が増えたこともあり、各学会の意向を反映して同会議が候補者を推薦し、首相が任命する形式に変更した。

 「学問の自由」の侵害といった懸念に対し、政府は「首相が形式的な任命行為を行う」と説明。当時の中曽根康弘首相も「政府が行うのは形式的任命にすぎない」と述べていた。

 平成17年の任命からは再選をなくし、現役会員と連携会員が後任を推薦する現在の方式に改めた。会議事務局は「学会推薦方式では、会員が特定の学術団体の利益代表の集まりとなっていた懸念から、各学会の影響力を回避する意図があった」と説明する。

 菅義偉首相は「前例を踏襲してよいのかを考えてきた」と述べ、自らが掲げる「あしき前例主義の打破」の一環との立場を強調している。一方、野党は「形式的任命」としていた昭和58年の政府答弁と今回の任命に矛盾があると批判を強めている。

 加藤勝信官房長官は任命に関わる法解釈について、平成30年に内閣府と内閣法制局と協議し「任命権者の首相が推薦の通り任命しなければならないわけではないという整理がなされた」と説明する。ただ、法解釈を整理した理由や判断根拠は明確には示していない。(千田恒弥、玉崎栄次)

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