【G20・IMF関連】中国「一帯一路」に逆風 債務外交に公然批判、国際機関トップも苦言
国際通貨基金(IMF)のゲオルギエワ専務理事(ロイター)
【ワシントン=塩原永久】中国による途上国への不透明な貸し付けに対し、国際機関のトップが批判を強め始めた。新型コロナウイルスの悪影響で債務を増やした途上国の救済策に中国が「及び腰だ」などと不満が噴出している。対中包囲網は狭まっており、途上国支援を足場にして中国が進めている広域経済圏構想「一帯一路」には逆風だ。
「残念なことだが、民間企業が(救済策に)及び腰で、政府もその企業に(協力を)求めようとしない」
国際通貨基金(IMF)のゲオルギエワ専務理事は14日の記者会見で、途上国の債務救済に消極的な中国などに不満をにじませた。
世界銀行のマルパス総裁も5日、債務の透明性を損なう動きに「中国の資本力がある新たな債権者」が加担していると公然と批判した。マルパス氏は米財務省の出身で、以前から中国の「債務外交」に批判の矛先を向けてきた。
IMFや世銀も加わる20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議では、債務返済の猶予で合意したが、中国開発銀行などについて中国は合意の枠外に置き、本来は中立的な立場の国際機関トップもいらだちをあらわにしている。
中国による巨額の途上国支援は、アフリカやアジアなどで「一帯一路」を展開する戦略の一環とされる。中国が、途上国の政治家が債務返済の責任を負わないで済むほど、返済期間を長期化し、「政治家が(中国から)貸し付けを受ける動機を高めている」(マルパス氏)という。
G20やIMFの会合に関連したイベントでも、途上国の高官から中国などに対して債務救済に参画するよう求める声が出た。
中国が貸し付けで債務国への影響力を高める「債務のわな」が問題視されてきた。コロナ禍を機に中国の債権国としての姿勢が試される局面となり、途上国でも一国に物資調達などを頼る危険性が認識されるようになって、「途上国が中国への過度な依存を避けようとしつつある」(元国務省高官)という。中国に対抗したい米国など欧米諸国にとり、投資強化などを通じてアフリカなどへの影響力を回復する「千載一遇の好機」(同)との見方も出ている。