ファストリ、V字回復予想 柳井氏「究極の普段着」自画自賛
記者会見するファーストリテイリングの柳井正会長兼社長=15日午後、東京都内
カジュアル衣料品店「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングは15日、令和3年8月期連結最終利益は過去最高となる前期比82・6%増の1650億円となるとの見通しを明らかにした。新型コロナウイルス感染拡大の影響がいまだに残る地域でも、3年3~8月期(下期)には新型コロナが収束し、業績が一気に回復するシナリオを描き、売上高は9・5%増の2兆2千億円、営業利益も64%増の2450億円と、過去最高だった元年8月期水準に近づく計画を組んだ。
合わせて発表した令和2年8月期連結決算はファストリの底力を見せつけた。売上高は12・3%減の2兆88億円、営業利益が42%減の1493億円、最終利益が44・4%減の903億円で、17年ぶり(平成15年8月期以来)の減収減益となったが、7月公表の業績見通しからは改善。都内で開いた決算会見で、柳井正会長兼社長は業績急回復の理由を問われ、「われわれのコンセプトは服の世界で最高のポジションにいる。究極の普段着で、仕事するときも家にいるときも、着心地良くて品質もいい、スタイルもいい。自画自賛だが、そういう服だ」と述べた。
コロナ禍による外出自粛を経験し、消費者の価値観は変化している。国内では在宅勤務やリモートワークが進み、仕事着のカジュアル化が浸透中だ。国内ユニクロは店舗営業再開後の6~8月、既存店売上高が前年同期比2割増を記録、国内向けネット通販は、コロナ禍後に利用が大幅に伸び、通期で約3割増を達成した。
海外では、国内ユニクロ直営店と同数となる767店舗(8月末現在)を展開する中国でも、コロナ感染拡大が収束し始めた今年3月以降、業績が回復。感染再拡大や天候不良から回復した7月中旬以降は、既存店売上高が前年を上回った。こうした国内外での6~8月の展開実績が、今後も新型コロナ感染の収束が見えれば急回復するというシナリオの裏付けになったもようだ。
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海外事業の中心となっている中国での展開を問われた柳井氏は、「今回のコロナ(感染拡大)は世界的危機だが、ある意味転機になった。欧米とアジアが連携していくことが本当に大事じゃないかと」と述べ、さらに重ねて問われると、「ビジネスは今、国境はない。中国で13億、14億人の人口がいるし、アジア全体で40億人以上がいる。欧米は消費力もある。地域関係なく出店すると思う」と話し、「中国だけで3000店十分可能」と兼ねてからの主張を展開した。
決算会見で柳井氏は、今後の展望を手元に用意した原稿を読みながら説明。戦後最大の危機のコロナ禍で、「政治的な対立が激化し、政治的な違いがビジネスの現場に影響しつつある。まさに危機的な状況だ」との現状認識を語り、「危機をチャンスに変え、よりよい社会を創る前向きな発想、具体的な行動。そうした発想が持てるかどうかで未来が変わる」と強調。そうした中で、ファストリの事業展開では、世界各地の協力工場に社員を常駐させて、商品の購買実績を製造現場に即座に反映。商品を作りながら売るという、ファストリの目指す情報製造小売業の深化を進めるという。
その上で、「今私が描いている夢は、世界の優れた個人や民間と連携し、国や民族の垣根を取り去って、国家というものに変わる真にグローバルなプラットフォームを作ること。夢物語や私の個人的な願望ではない。本当に社会の役に立つ企業しか、もはや生き残ることはできない。それこそが、真実だからだ。世界中の消費者はそのような企業の姿勢を指示し、これらの企業の商品やサービスを購入することで応援してくれると確信している」と述べた。
「これからも先頭に立って行動していく」という柳井氏とファストリはどこへ向かおうとしているのか。明らかになるのにそう時間はかかりそうにない。