AI技術を支える「アノテーション」 八戸の企業に注目

横山蔵利

パソコンに向かってアノテーションの作業を進める人たち。オンラインでの業務も可能だという=2021年1月18日午前11時38分、青森県八戸市、横山蔵利撮影

 人工知能(AI)の精度を上げるために必要なデータを入力する「アノテーション」という作業をめぐって、青森県八戸市にある障害者就労継続支援会社「はちのへ東奥朝日ソリューション」(亀橋進社長)が注目を集めている。三菱UFJリサーチ&コンサルティング(東京)も趣旨に賛同して協力しているほか、八戸市も有望なビジネスモデルとして支援を決めた。

 アノテーションは、英語で「注釈」の意。AIの精度を上げるため、大量のデータを入力する作業をさす。

 大量のトマトの写真から収穫できるトマト、未成熟なトマトなどを分類し、AIに覚え込ませる作業などがその一例だ。地形や建物、信号、路面などさまざまなデータを入力して覚え込ませることで、最先端の自動運転技術の開発などにもつながる。データが多ければ多いほど精度も向上することから、アノテーション作業のニーズが世界的に高まっているという。

 はちのへ東奥朝日ソリューションは、2019年からアノテーションの仕事を受託している。国立大学の研究所や有名企業などからの仕事も少なくないという。亀橋社長は「就労支援施設は単純作業を請け負うことが多いが、障害のある人には高度な作業が得意な人も多い」と話す。

 課題となっているのが、アノテーション作業を指導する人材が不足していることだ。はちのへ東奥朝日ソリューションでは、マニュアル作りや指導者の育成にも重点を置き、アノテーション作業が全国の施設などに広がることをめざしているという。こういった取り組みが注目を集め、全国から自治体関係者や議員が視察に訪れている。

 八戸市は、地元産業の活性化に加え、就労が困難な人に働く機会を創出することにもつながる新たなビジネスモデルととらえ、指導員への研修、設備の導入などに上限500万円を補助することを決めた。市の担当者は「AI関連の需要はこれからも増える。成長してもらいたい事業だ」と期待を込める。

 アノテーション作業はオンラインで進めることができるため、コロナ禍の現在も比較的影響が少ないとい、亀橋社長は引きこもりの若者やシニアがリモートで就業する形も視野に入れている。「福祉とAIの連携が、新しい仕事の創出につながる。八戸を最先端で先進的な街にしていきたい」(横山蔵利)

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